景気、中央銀行による金融政策、クレジット（信用）には、すべてサイクル（循環）が存在します。現在、米国では、いずれの観点からもサイクル後期に位置していると考えられます。一方、その他の主要市場は、より早期の段階に位置しているため、成長の余地は大きく、米国経済の大幅な減速がない限り、企業利益の成長が下支えられると考えます。

世界経済は潜在成長率を上回る水準で推移しており、歴史的に見るとこれは米国外の企業の利益成長を支えてきました。売上高が1米ドル増加するにつれ、米国外の企業の利益は米国企業以上に上昇する傾向にあります。これらの市場は、米国に比べて高水準の営業レバレッジ、より広範な売上構成、金融セクターの比率が高いことなどから、今後世界的な景気拡大が継続する場合にはより恩恵を享受できると考えています。

過去を振り返ると、新興国と先進国の成長格差が広がるにつれ、新興国株式は先進国株式をより大幅にアウトパフォームする傾向が見られます。IMFの予測に基づくと、新興国の景気拡大は今後も継続する見込みであり、新興国株式が相対的に堅調に推移する状況はこの先も続く可能性が高いと考えます。

米国における過去3回の利上げ局面では、新興国株式は下落するどころか、むしろ堅調に推移しました。良好な経済環境も下支えとなり、今回の利上げサイクルでも同様の傾向を示すと見ています。

アベノミクス導入以降、日本ではこれまでにない金融・財政刺激策により、労働生産性が著しく向上しました。安定したマクロ環境、超緩和的な金融政策の継続、企業のファンダメンタルズの改善は、日本株式に対する持続的な追い風となっています。

過去約5年間の日本株式のリターンは、企業利益の上昇がその要因の大部分を占めています。これは、バリュエーションの拡大が大きくリターンに寄与した米国や欧州と比べて対照的です。その結果、大幅な株価上昇にもかかわらず日本株式の相対的な割安感はさらに増す形となっています。

米国債券の代表的な指数のデュレーションは過去最高水準に達し、金利の変化に対する債券価格の感応度は高まっています。さらに、VIX指数で計測される株式市場のボラティリティも足元急上昇しています。

過去2回の株式急落局面において、オルタナティブ戦略は低ベータの特性から、株式市場全体の半分程度の下落幅に留まりました。同様に、過去2回の金利急騰局面において、債券市場全体のリターンがマイナスとなる中、オルタナティブ戦略はその相関性の低さから、プラスのリターンを実現しました。

ビッグデータがもたらすものは、単なる情報処理速度の向上や、情報量の増加にとどまりせん。有益な洞察を導き出すためには、先進的な分析力をもち、テクノロジーを駆使できる優秀な運用者が必要です。生成されるデータが指数関数的に増大するにつれ、人間による判断とコンピューターが導き出す分析を的確に融合させることが重要となります。

自然言語処理技術により、膨大な文章データから、人間には気付くことのできない投資テーマや洞察を導き出します。微妙な企業間の関連性や、市場のトレンドなどを発見することができます。データ主導のテクノロジーは情報に基づく推論をタイムリーに導き出しますが、それと人間の判断を融合させることが成功への鍵となると考えます。

これまでESG投資やインパクト投資については、リスクの高いニッチな分野であるとの懸念や社会的なインパクトと投資のリターンは両立しないとの消極的な意見が散見されました。しかし、最近では望ましい対象への投資やリスク管理の強化を目的としたESG投資に関する話題が挙がるなど、前向きな意見が数多く聞かれるようになってきました。

ESG投資を効果的に行うためには、適切な評価基準を選定する必要があります。ESGに関するデータ数は急増していますが、ESGやインパクト投資を成功させるためには、ESGファクターの、質・影響力・具体性に着目することが重要です。